佐々木俊尚

「進め!!東大ブラック企業探偵団」作者が佐々木俊尚氏を直撃 幸せなキャリアの作り方とは

2016.06.19

 元競技ダンス日本一の現役東大経済学部生で、講談社からライトノベルタッチの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』を出して話題を集める、大熊将八君という人がいます。前にLIFE MAKERSのオープンイベントで登壇してもらい、アメリカのメディア事情を話していただきました。また大熊君自身のブログでインタビューしてもらったこともあり、クラウドファンディングで資金を集めてアメリカ新興メディアの突撃取材した折りには告知に協力しました。その彼がわたしの自宅兼オフィスにインタビューに来てくれて、その内容を寄稿してくれるというのでお願いいたしました。以下は、大熊君のまとめです。

「いい企業」を選ぶのではなく、「自分が何の専門家になるのか」を考える

大熊 お久しぶりです!本日はよろしくお願いします。

佐々木 こちらこそ、よくいらっしゃいました。新興メディアの旅から帰って、本をだしたんですね? 売れてるの?

大熊 はい。僕は先日、「進め??東大ブラック企業探偵団」という企業分析の本を出版しました。おかげさまで、重版出来!! していま1万1000部です。

佐々木 それはそれは。で、どんな本なんですか?

大熊 上場企業が公開している財務情報にもとづいて、「いい企業」「悪い企業」とはなんなのかを探求した本です。本書に出てくる「東大ブラック企業探偵団」はもともと、僕が参加していた、インカレサークルの「瀧本哲史ゼミ」がモデルとなっています。執筆の背景には、かつての日本と違い、人材を育てる余裕のない会社が増えてきていて、幸せに働くことが難しくなってきているという危機感があります。
そこで今日は、毎日新聞社という大企業で働いた経験を持ちながら現在はフリーの作家・ジャーナリストとして活躍され、自身のSNSや著書での発信を通じこれからの働き方・生き方について積極的に提言されている佐々木さんから「どうやったら幸せに働けるのか」について勉強させてもらいたいと思い、ご自宅で、対談の場を設けていただきました。ほんとうにありがとうございます。

佐々木 なるほど。よろしくお願いします。はい、よろしくお願いします。でも、まぁ、はじめに言っておくと、「いい企業」なんてものはありませんよ。

大熊 えっ!?。

佐々木 企業にいい・悪いがあるとか、そういう設定自体が正しくないんじゃないですか。今儲かっているところを「いい企業」としても、そこが10年後もいいとは限りません。新卒採用で入れば一生安泰な企業なんてない。大事なのは企業選びではなく、「自分が何の専門家になるのか」という観点を持つことです。20年前にシャープやソニーに入った人は、それぞれの会社がいまこんな状態になるとは夢にも思わなかったでしょう。そこでの選択を、今になって後悔してもしょうがない。現時点でいい企業かどうかなんて重要じゃないと気づくべきです。

大熊 本書の中では、変化できる企業をいい企業だとしています。激務であっても、高い技能が得られれば良いと主張していますが......。

佐々木 いままで変化に対応してきた企業であっても、経営者が変わったり、時がたつにつれて企業文化が変わるかもしれないじゃないですか。会社を選ぶんじゃなくて、職を選ぶという発想が重要です。雇用の形態は大きく「ジョブ型」と「パートナー型」の2つに分類できます。欧米諸国では前者を主に採用していて、営業のスペシャリストになる、あるいは経営を専門的に突き詰めていくといったように、どういった職能に絞って仕事をするのかという発想をします。

 一方パートナーシップ型は、特定の会社でキャリアアップすることに焦点があてられています。例えばソニーならソニーの事業部で営業をやって、経理も経験して......というように、「ソニーマン」になることが求められます。この仕組みはジェネラリストを育てるといいますが、その会社の専門家を育てているにすぎないんです。ある会社での、稟議の通し方や、派閥抗争に勝ち抜くための技術しか身につかない。ひとたびその会社が倒産したり吸収合併された途端にその常識は通らなくなります。

「俺は実はもともとすごい会社にいて......」でいいのか

大熊 実際、シャープをリストラされた人の再就職先がなかなか見つからないという問題が発生しているようですね。今までシャープという大企業の看板を使って仕事をしていたけれど、それがなくなった途端に何もできなくなる、と。

佐々木 ただ、多くの電機メーカーがリストラをしている中で、技術力や開発力がある人材はアイリスオーヤマのようなユニークなメーカーに転職して成功しています。
一生のリスクヘッジをしたいなら、会社を選ぶなんて考え方は一切捨てるべきです。入り口はなんだってよくて、何をする人になりたいか次第じゃないですか。

大熊 自分がなりたいものとマクロの市況環境のマッチングは重要かなと思っています。
佐々木さんが新聞社を辞めてライターになられたときは、雑誌が全盛期で、ライター需要がとても高かった。でもWebメディアが溢れる今日、はたしてこれからフリーライターとう選択があるかと言うと......。かえり市況が厳しい今から僕が作家になりたいと考えても難しいですよね。

佐々木 市場があるかどうかという観点は非常に大事です。でも、いま市場がないから永遠に市場がないかというとそうでもない。Webメディアのせいで、既存のメディアが苦境に陥ったためそのためにライターは食えなくなっていると言われていますが、メディア自体は増えているのだから、ものを書くという市場は全体で見たら大きくなっているという捉え方も出来ます。未来を予測しきることは難しいので、その都度判断するしかありません。ジョブ型志向で働くことも、よくよく考えないといけませんね。

......とさらに「就職」にまつわるさまざまな話が続いていきますが、この続きはメルマガ「未来地図レポート」で! 購読はこちらから。