佐々木俊尚

あいまいな「思考」というものを11の公式に落とし込む:「思考のスイッチ」

2016.03.29

 この「思考のスイッチ」という本、ほんとに面白かったです。「面白くて使える思考本」というキャッチフレーズ通り、「思考」っていう一見高尚なものを因数分解してパターン化している。インターネットのロジカル中心時代に適合した感じのアプローチですね。

 「新しいアイデアを出せ」って言われてもなにをどう考えればさえ思いつかないと受けとめる人が多いと思いますが、この本ではアイデアと思考を分離して、思考は「思いつく一連の過程」、そしてアイデアが「思考の結果生まれたもの」と定義。そして思考を11の公式に分類しています。

 「常識→非常識術」「ライバル接着術」「付属品接着術」「限定術」「順番入れ替え術」「他者憑依術」「鉄板モチーフ術」「ワールドレコード術」「ニュースコラボ術」「著名フレーム利用術」「4大欲求満たし術」

 タイトルだけ見ると何のことやらわかりませんが、たとえば冒頭に紹介されている「常識→非常識術」のお題では、立ち食い蕎麦屋の新しいアイデアをこの公式で考えています。立ち食い蕎麦の常識は、

 「気軽に入れる」「安い」「早い」

 これを全部非常識に転換すると、

 「会員制」「一杯二千円」「出てくるまで三十分」

 そうすると会員制で値段の高い蕎麦屋、っていう新しい業態が思いつくというわけです。そんなアホな店あるか、と思う人もいるかもしれませんが、しばらく前に爆発的な人気になったレストランチェーン「俺のフレンチ」なんて、「高級で座って食べる」というフレンチの常識を、「安価な値段で立って食べる」とひっくり返して非常識にしているわけで、まさにこの「常識→非常識術」を地で行っている感じです。

 ほかにも面白いお題がたくさん紹介されており、なんだか目からウロコが落ちる感じのたいへん勉強になる本でした。著者は電通出身のクリエイティブ・ディレクター、西島知宏さん。「街角のクリエイティブ」というウェブメディアの編集長も務められています。

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 『思考のスイッチ 人生を切り替える11の公式』(フォレスト出版)