佐々木俊尚

パイナップル酢豚を「家めし」風にアップデートする

2014.04.26

pineapple.jpg


「不味い料理」というと筆頭にあげられることが多いのが、パイナップル入りの酢豚。「なんで料理に果物が入ってるんだ」「甘くて気持ち悪い味」とか、さんざんに言われています。でも生の新鮮なパイナップルってそんなに甘くないうえに酸味が強くて、柑橘類の味に近いですよね。柑橘をサラダなどの料理に使うのは一般的だし、鴨のオレンジソースはフレンチの定番料理ですから、パイナップル料理だってちゃんと作れば不味くはならないはず。

 じゃあどうしてパイナップルの酢豚が不味いと思われてきたのか。わたしなりに不味いポイントを整理してみると、以下のような点が問題なのじゃないかという結論に達しました。

(1)そもそも缶詰のパイナップルを使っているから、甘ったるくて不味い。
(2)日本風の酢豚はケチャップを使ってるけど、ケチャップと中国料理ってそもそも組み合わせとして変。
(3)そしてケチャップの味付けのあんかけに、ニンジンとかピーマンとかの食感はどう考えても合わないように思う。

 だとすれば、この逆張りをすれば旨いはず。つまり、生のパイナップルを使い、ケチャップを使わず、余計な具材を入れないシンプルな酢豚を作ってみればいい。

 酢豚の原型は豚肉を揚げてあんをからめた中国料理で、野菜の具材はほとんど入れないもののようです。だったら中国本場風に酢豚の調味をアップデートすれば良いのでは。

 とはいえ中国料理も本気で本場風にやろうとすると、スパイス使いがたいへんなので、今回は「家めし」的にシンプルで手順を思いきって省いた方法で作ってみました。二度ほどトライして会心のできのものになったので、レシピをご紹介しましょう。

 用意するものは、まず豚肉。肉中心の料理なので、油の多いバラ肉よりは赤身のヒレ肉やロース肉の方がいいと思います。ブロックで買ってくること推奨。

 そして生のパイナップル。丸ごと買ってきてもいいし、少量つくるのならカットパインでも。主な材料は以上。

 それからにんにく、しょうが、長ネギ。調味料として、かたくり粉、黒酢、オイスターソース、紹興酒、砂糖(やさしい味つけにするのなら、紹興酒じゃなくて日本酒に、また砂糖をみりんに変えるなどもいいと思います)。

 まず下ごしらえ。生のパイナップルは、なるべく細かくカットします。サイコロ大ぐらいが食べやすいかな。ブロックの豚肉を、厚さ1センチぐらいのそぎ切りにします。あんまり薄いと食感がもの足らないし、ぶ厚すぎると火が通りにくく食べにくいので、このぐらいの厚さがいいんじゃないかな。かたくり粉をはたいておきます。

 最初に、たれを作ります。にんにく、しょうが、長ネギをみじん切りにして、小鍋にまとめて放りこみます。パイナップルも。ここに紹興酒をひたひたになるぐらいまで注ぎ、黒酢を大さじ2杯ぐらい、砂糖大さじ1杯、オイスターソースを小さじ2杯ぐらい。まあ味見しながら分量は適当でいいんじゃないかな。これを弱火にかけて、5分ぐらいぐつぐつと煮ます。生のパイナップルは意外と煮崩れないんですよね。

 天ぷら油を熱して、160度ぐらいに。豚肉をかりっときつね色になるまで揚げましょう。この間に、たれに水溶き片栗粉をかけ回して、とろみをつけておきます。これでたれは完成なので、とろ火にして保温しておきます。

 豚肉が揚がったら油を切って、浅めの大鉢に盛ります。この上から、たれをこんもりとかけ回して、完成! 揚げ豚が完全にたれに没入しないように、豚の一部だけにたれがかかってるような具合にすると、肉のかりっとした食感が残ってさらに美味しく感じると思いますよ。

 たれをすくう匙も添えて、テーブルに。熱々のを、かりっと! パイナップルのさわやかな酸味と黒酢のこってりした酢っぱさ、それに揚げた豚肉の旨さがからみあって、かなり絶品になりました。

 中国料理って本場風につくると美味しい。戦後日本的ケチャップ中華料理はそろそろ脱却して、家庭料理でも本場風のあじわいを採り入れる時期に来てるのでは。ただ先にも書いたとおり、本格的につくると面倒なので、ここは思いきって簡略化して、素材の味を生かした感じにしあげるのが佐々木流「家めし」スタイルです。

 おかげさまで四刷になった『家めしこそ、最高のごちそうである。』には、こういうシンプルかつミニマルな家庭料理の考え方をたくさん書いています。レシピも載ってるよ。