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あなたなら何を食べたい? 書籍『人生最後のご馳走』

2015.10.17

 大阪市に淀川キリスト教病院というホスピスがある。末期のがん患者が延命治療をやめ、残された短い時間をおだやかに過ごすための場所だ。成人病棟の平均在院日数は、わずか三週間なんだという。なんだか切なくなってしまう数字だ。

 淀川キリスト教病院は「リクエスト食」という取り組みをしている。決められた病院食ではなく、患者さんひとりひとりが好きなメニューをリクエストできるんだって。それを優しい文章とともに紹介したのが、この『人生最後のご馳走』という本。

 金曜日の昼下がりになると、病院の管理栄養士の大谷幸子さんという優しそうな女性が、病室をたずねてまわる。ベッドサイドで患者さんにいま食べたいものや味つけの好みなどを聞いてまわるのだ。せかすことなく、世間話をするように、ゆっくりとていねいにヒヤリング。本の中ではこんなふうに描かれている。

「玉井さん、こんにちは。明日の夜は、お好きなメニューをリクエストしていただけるリクエスト食ですが、何か召し上がりたいですか」
「明日はね、熱々の天ぷらをお願いしたいんです」
「揚げたての熱々は美味しいですもんね。お好みの具はありますか」
「そうですねえ、海老とかイカとか......南京も好きです」
「他にはいかがですか。たとえば椎茸や大葉など、お好きなモノは何でもできますよ」
「わあ、椎茸も大葉も大好きです。でもそんなにいくつもいいんですか」
「お好みの量をご用意します。玉井さんは、普段から天ぷらはよく召し上がっておられたのですか」
「子供たちも大好きでね。最近は主人と二人ですし、この病気になってからは体に力が入らないので油が怖いから、家では揚げていなかったんです」

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 最後の食事になるかもしれない。そういう時に人が選ぶ献立には、その人の人生が色濃く投影されている。この本を読んだ人はたぶんみんな、「自分だったら何を選ぶだろう」と考えるんじゃないかな。

 私なら何を選ぶだろう。ここ最近、どうやって人生をシンプルにミニマルにしていくかということをとても考える。だから最後に食べる食事は、とてもシンプルなものがほしい。そう、たとえばいつも家で自分が作っているご飯と味噌汁。鍋で炊いたばかりの新米と、油揚げと菜っ葉の薄味の味噌汁かな。

 しみじみと読ませ人生の終わり方を考えさせる、いい本です。

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