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「これからメディア業界でメシ食ってくってどうなんですか?」〜就活生から「OB訪問」されてみた(上)

2013.04.14


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 就職活動のOB・OG訪問をオンラインで実現するジョブカレというサービスがあります。

 これは「OB・OG訪問を受けてもいいよ」と考えた社会人が、自分の空き時間と面会場所をサイト上で設定し、それに就活中の学生が応募するというマッチングサービス。若い人たちがやってるスタートアップ企業のサービスですが、なかなか面白い発想だと思います。この運営元企業Arinosから「佐々木さんもOB訪問を受けてみていただけませんか」と申し出があったので、さっそく実施してみました。昨年末のことです。

 まず学生さんたちの自己紹介から。

オガワ君:僕は中東や東南アジアに興味があって新聞や映画、本などをみて現状を勉強していて、新聞社に入りその実情を日本に伝えたいなという風に思っています。

キクカワ君:大学時代は、サークルは広告研究会に入っていてバイトは日経新聞の証券部の雑用をやってました。あとは国会事務所でインターンしてました。志望業種はマスコミや商社金融を考えています。

サカモト君:志望業界はコンサルティングや金融を狙っているんですけど、今ちょうど授業で「メディアと政治」というものをとっていて、そこのところを聞きたいなと思っております。

イマニシ君:僕は今業種・業界を特に絞らず主にベンチャー企業を中心に回っています。なぜベンチャー企業かというと、若手の力をどんどん自分でとってきてバリバリ仕事をやって自分の成長につなげて、それと共に社会貢献をやっていきたいなというちょっとキレイごとになってしまうんですけど、そういった理念をもって今活動しています。

ニシゾノ君:自分だけこんな格好ですいません(ニシゾノ君だけはスーツにネクタイではなくラフなファッションでした)。

佐々木:別に就職活動ではないのでいいんじゃないですか(笑)。

ニシゾノ君:高校の頃から僕もジャーナリスト志望というか、そういう記者職に就きたいなと思っておりまして、大学選びも社会学部という主にマスコミ業界に行く学部があったのでそこを選びました。

 いろいろ勉強してたんですけど、それこそ佐々木さんの著書にあるんですけど新聞とかテレビとか今後どうなって行くんだろうというのが去年くらいからいろいろ考え始めました。

 今後はネットメディアかなと思い、ITベンチャーの方でネットメディア運営の方をお手伝いさせてもらって、今後ジャーナリズムはどうしていくべきかなと悶々と考えております。今日は非常にいい機会なのでそのへんをお聞きできればいいなと思っております。

ジンボさん(唯一の女子学生):将来は業界で言うとマスコミを考えていて、あと映画がすごく好きなので業種関係なく映画に携われる仕事がしたいなと思っております。

 いろんな企業をみているんですけど、最近コミュニケーションの形が変わってきているといろんな方から聞くので、それによって全業種のあり方が変わってくるんじゃないかなと最近は考えて、本などを読んでいてそこを今日は聞きたいなと思っております。

佐々木:さて、始めますか。でも僕自身の就職はバブルの頃だったので、就職活動がめちゃめちゃ楽だった。なのでそもそも僕が就職活動をしていた時の話をしても意味がない。お話しできるとすれば今のメディアがどうあるのか、ジャーナリズムは今後どうなるのか、メディア全体はどうなるのといったお話はけっこうできるんじゃないかなと思います。

新聞社をどう生き延びさせるかは答がない

 最初に各ジャンルについて、基本的なことだけざっと僕の方から総ざらえしておきましょう。短い時間なのでかなり乱暴なまとめになるから、後は自分で調べてね。その後で質疑応答にはいります。

 まずね、メディア構造がすごく複雑な状況になってきていて、例えば新聞やテレビ、出版がかなり衰退してきているのは事実。

 新聞社は広告費が全盛期の半分以下。販売部数はお年寄りが多い田舎の方はたくさんとっているのでそんなに衰退してないんだけど、全体の収益としてはすごい悪くなっていて、実際働いている30〜40代の現役記者からみると俺たちこれから先どうなるのっていう不安がそうとう渦まいているのは事実です。

 新聞の問題っていうのは結局ニュースしか飯を食う種がない、だからニュース自体がコモディティ化っていうんだけど別に通信社でもいいんじゃないかって話になってくる。

 日本の新聞は、通信社機能と新聞社機能を両方持っているのが特徴です。アメリカでは通信社と新聞社が別々に分離していて独立して、例えばロイターやAFP、ブルームバーグみたいなのが通信社で、これらは速報で一次情報だけ流す。例えば何かの事件が起きたら、その事件に関してばっと今わかっている情報を流す。衆議院解散しましたという話があったらその情報を流す。

 一方、新聞社は速報を追わない。その代わりに通信社が流した速報をもとに、自分たちで独自取材したもうちょっと突っ込んだ分析記事を書きましょうっていうことです。ウォールストリートジャーナルなんかがその典型で、一次情報を書かないっていうポリシーでずっとその流れでやってきた。

 日本の場合は通信社と新聞社がきれいに分離していないので、新聞社自体が通信社的に速報もやり同時にその記事に対する分析記事もやりましょうっていうスタンスで長年やってきたんですね。

 おそらく後者の分析記事に関しては今後もニーズがあるであろうと、ただ速報みたいなのは別に通信社でいいじゃんと。よくネットで見られるからいいという意見に対して新聞社が「いやネットで見られる記事だって我々が書いているんだ」と反論する人がいるんだけど、あれも言ってみればネットで見られる記事なんて所詮速報でしかないんだから、別に新聞社が書いたなんて偉そうに言うことでもないのは事実。結局そこで飯食えないのは大変で、かと言って分析記事だけでそんなに飯が食えるかっていうと、例えばアメリカの分析記事を中心にしている新聞社はだいたい規模が小さい。

 ニューヨークタイムズにしろウォールストリートジャーナルにしろ社員が数百人とかで、部数も数十万部くらいで日本からしたら桁が違う。朝日新聞は社員が五千人で部数が八百万弱くらいで、そうするとものすごく巨大なビジネス。その巨大なビジネスが分析記事だけで食えるかっていうとそこまでのニーズはないからけっこう厳しいんではないのかという状況なんですね。

テレビはまだかなり可能性がある

 それに比べたらテレビはまだかなり可能性があって、なんでかって言うとニュース以外にいっぱいコンテンツがあるからなんだよね、番組、バラエティーとかドラマとか。

 なおかつあんなにマスにリーチできる広告媒体っていまのところ他にない。今まで広告媒体の4マスって言われているテレビ、新聞、雑誌、ラジオそれからインターネットが出てきた中で、インターネットの広告がすごい伸びてて、もう新聞を抜いているんだけど、ネット広告のメリットでもありデメリットでもあるのは、すごいクラスター化されていること。細かい広告を細かい人向けに送るということはできるわけです。

 たとえば僕らみたいな50歳くらいの人がFacebookをみると、必ずハゲの広告とか出てくるんだよね(笑)。要するにそれはターゲッティングされた広告が載るっていうのはネットの広告の特徴なんだけど、かと言って例えばじゃあコンビニで売っているお菓子とかアイスとかあるいは花王が売っているシャンプーだとか日用雑貨は何百万人が買う。そういう人達に向けてバーンと広告流すっていうのにはインターネットはあんま向いてなくて、やっぱりテレビだよね。まあ1%見てるとだいたい300万人が観てるといわれてるわけです。

 だからその部分でやっぱりある程度のテレビの広告価値は残ります。実際、午前中の主婦が見るような番組のCMはほとんどそういったいわゆるコモディティ商品になってる。コンビニ、日用雑貨、車もせいぜい軽自動車みたいなのが流れているという状況。でなおかつ番組コンテンツがあるから、新聞ほどには衰退しないよねとは言われている。

 ただ現状急速に広告費が減った部分もあります。それで凄くコスト削減をしていることが、足を引っ張りつつあるという状況も出てきています。

 テレビ局の局員ってほんとにわずかしかいなくて、キー局でも1000人ぐらい。しかし番組作っているのはその十倍から数十倍くらいで、全部制作会社の人達です。そして彼らは給料安いんだよね。

 大手の例えばフジテレビとかだと年収が1500万くらいで、制作会社の人達が500万くらいで3分の1。その人達が一生懸命番組をつくっていて、なんでそんなに安いのにやっているかと言うと、華やかな世界で仕事をしたい、あるいはクリエイティブな仕事をしたいという希望があるから人が集まるんですね。ただテレビ自体が前ほど憧れの現場ではなくなってきているうえに、製作費がものすごい削られてきてクリエイティブであること自体が厳しくなっているという現状で、だんだん人材が集まらなくなってくる。

 昔だったら皆さんのような名前の知れている大学を出ていても、テレビ局に入社できなければ制作会社に行こうとみんな考えたんだけど、労働環境劣悪でほんとに毎晩徹夜して身体ぼろぼろにして、コンビニ弁当ばっか食べて太って、それで年収300万とかだとちょっとやってらんないよねという感じになってきている。なのでいい人材が集まらない。そうするとだんだん番組の質も下がってくる。

 そういう悪循環の中で、どこかでここを切り離して、NHKのようないい番組をちゃんとつくってそれを見られるようにすれば、テレビ局のクオリティを担保できる。そして最終的にはいい方向に行くはずなんだけど、結局そこが踏み切れないでいて、どんどん悪い状況に行っているのが現状。だから将来的には可能性がないわけではないけど、今のところあまりいい展開にはなっていないね。

出版業界はまあかなりたいへん

 日本の出版社って、ものすごく特殊。たとえばアメリカだと出版社って、タイムとかスポーツイラストレーテッド、コンデナストとかは全部雑誌社なんですよ。コンデナストにしろタイムにしろ全部雑誌しか出していない。一方で本を出している出版社ってランダムハウスとかペンギンとかあるんだけどこれは本しか出していない。

 でも日本の出版社って本と雑誌両方出している、これがすごく特異な形で、日本の本はあまり儲からないんだけれど雑誌を儲けることで維持してきたっていうのが、日本の出版社の特徴なんだよね。

 だからマイナーな文芸書出してもあまり売れず、一方で雑誌や漫画が売れていて、その儲けたお金で純文学の地味な作家を育てるみたいなことやってきた。でもいま雑誌が売れなくなってしまった。すごい勢いで休刊されていて、たぶん市場規模でいうとざっくりだけど僕のイメージだけでも90年代終わり頃の全盛期と比べると、1/3ぐらいになってる印象。そのおかげで本のほうが維持できなくなってきて大変っていうのが今の出版社の状況です。

 最大手の講談社とか小学館とかは不動産も大量に持っているし、あと結構重要なのが売れてる漫画のコンテンツを大手は持っているので、そう簡単には倒れないと思うんだけど、小さい雑誌や文芸のみの出版社とか、マイナーなところはほんとにいつ潰れてもおかしくないところだらけっていう状況になってきています。

 とくにやばいと言われ続けてるのは雑誌中心でやってきたM社で、雑誌がぜんぜん売れなくなって息絶え絶えっていうかんじ。高年齢化も激しくて、出版不況で新卒の採用をものすごい抑制していて、たぶん100数十人ぐらいの社員数いないんだけど、20代が数人というすごいことになってます。おじさんだらけっていうかね(笑)。そして社内を見ると、おじさんが「昔は良かった」っていう自慢話ばかりしているという、かなり哀しい状況になっているらしいです。

ネットメディアもまったくバラ色ではない

 一方でインターネットのメディアはいいのかっていうと、これが実はぜんぜんよくない。

 一時は良かったんですよ。90年代の終わりからゼロ年代前半にかけては、ネットメディア業界が相次いで立ち上がりました。大手で言うと、ITメディアとかCNET。今はCNETは朝日新聞に買収されてしまいましたが。でもそうしたネットメディアも、プロが作る編集されたメディアの外側に広大な数のブログとか、あるいはTwitterやFacebookが出てきたことで、相対的に影響力が落ちるということが起きて、その結果収益力が悪化してしまっています。

 じゃあメディア界隈で今一番元気があるのはどこかと言うと、ドワンゴでしょうね。ドワンゴは一時報道機関というかニュース部門を拡充し、200人ぐらいの陣営にまで増やしたんですね。出版社やテレビ局、新聞社などからたくさん記者や編集者が流入していたんです。

 でもそこはいろいろあって、ニュース部門はばっさりリストラされてしまっています。だからドワンゴに行って取材の仕事をするというのは今後はそんなに期待できない。でもいま、そこから出た人たちがまた新たなメディアに参加するという現象も起きてきている。さらに2013年5月からは、ついに外資系のメディアハフィントンポストが日本で本格スタートという「黒船来襲」が起きます。

フリーランスライターの実状は?

 そういう状況で僕自身に話を振ると、いまやジャーナリストがどうやって飯を食っていくのかというと、今のところよくわからないんです。

 僕のようなフリーのジャーナリストやフリーのライターは、かつては雑誌で飯を食っている人がほとんどでした。本を書くだけでは生活できないので、大半のフリーのジャーナリストは雑誌に原稿を書いていたわけです。雑誌の取材費もでるので。例えば事件の取材をすると出張をして、この間青森に行って来ますとなると、その旅費を出版社が出してくれるっていう構造だった。しかしさっきも言ったように出版業界がものすごい勢いで崩壊していて、雑誌もなくなってきている。だからそういうところからお金が出なくなってしまった。そして原稿の依頼もあまりこないので、ネットメディアに原稿を書くかということになるんだけど、そうすると原稿料がものすごい安いんです。

 たとえば総合週刊誌とかだと90年代からゼロ年代前半ぐらいまでなら、1ページ原稿料が3〜5万円くらい出ました。だから10ページの原稿書くと、30〜50万円、まあ10ページも書かせてもらうことはほとんど無いけど、4ページでも12〜20万円になり、貧乏ライターでもカツカツ1ヶ月くらいの収入になってる感じではあったんですね。

 その収入が途絶えつつある。そしてネットメディアはどうかと言うと、1本書いて1万2000円〜1万5000円なんですよ、標準的にはね。1ページじゃなくて1本ですよ。だからどんなに分量を書いても、1万5000円。これでは生活はできません。

 その中でメルマガやったりする人も増えている。しかしメルマガは最近、急にブームになってあれもこれもとみんなやり出したので、そう簡単には収入の糧にはならない状況かな。おまけに始めたはいいけど読者が少しでもつくと簡単にはやめるわけにはいかない。だから「毎週書きます」とか言っときながら、読者が何十人しかつかないとなると、月に何千円のために毎週原稿書くのかという大変な状況になってしまう可能性もあり、難しいと思います。その先にどうやって飯をくっていくのかっていう答えは、今のところありません。

広告業界は過渡期の真っ最中

 ついでに広告の話もしておくと、これも過渡期なんですよね......。

 電通や博報堂は潰れることはないでしょう。ただ今の広告業界の問題は、メディアレップって言って、メディアの代理人としてメディアの枠を持っていることを強みにしてしまっていること。

 テレビ局や新聞社ときっちり関係をもっていることで、ゴールデンタイムのあの時間帯の枠は電通が我が社が押さえてますよとか、朝日新聞への全面広告はうちが押さえられますよ、とスポンサー企業に売っていくっていうのが、日本の広告代理店のやりかたなんです。

 アメリカではこれが逆で、広告代理店はクライアント側のコンサルタントになっています。たとえばプロクターアンドギャンブル(P&G)のような会社に顧客になってもらった場合、P&Gの広告を全面的に預かって、その広告をどこに、CMを打つのか新聞広告を打つのかっていうのを割り振っていく。

 日米でどっちがいいか悪いかっていうことではありません。ただ現状ではマスメディアが衰退してきて、新聞、テレビに広告出してるだけではだめだよねって状況になると、新聞・テレビに枠をもっているのが強みの日本の広告代理店は微妙な立場に立たされることになっちゃったわけです。

 スポンサー企業の側もいま、広告代理店にたくさんの人が不満をもっている。スポンサー企業の彼らからしたら、新しい製品を出しますと、でこれについてキャンペーンをやりますというときに、別にあのテレビのあの番組に出したいわけではない。いろんなことをやりたいわけです。

 テレビではここにCMを出して、そこからインターネット上の入口にウェブサイトで特設サイトを作ってそこでおもしろい動画ものっけてっていう、全体を設計するみたいなプロデューサー的な仕事を広告側にやって欲しいっていうニーズがあるんです。ところが日本の広告業界って、ほとんどみんな体育会系の営業マンなんだよね。

 何の営業マンっていうと枠を売る営業マン。で枠を売るために何をしてきたかと言うと、そうやって戦略的にあれこれ計算するのではなくて、どっちかというとぶっちゃけて言えばカラオケ行ってクラブ行ってという営業で飯食ってきたおじさんたちが大量に上の方にいっぱいいるわけ。その人達はインターネットのなんかなにも知らないし、使えないんですよ。

 若手でもちろん優秀な人もいるし、中年でもITのことわかっている人もいるんだけどそれは少数派で、その人達の仕事ばかりがどんどん増えて行く。そして体育会系営業しかできないおじさんたちの仕事がどんどん暇になっていくけどあの人たちの給料が一番高いという、そういう悲惨な構図になってしまっている。

 そういう人材、かつては体育会系営業マンの強みがかつての日本の広告業界のアセット、資産だったんだけど今は逆に不良資産になってしまっているっていう明確な状況にあると。ここをうまく乗り越えてメディア代理店ではなくて、ちゃんとクライアント側の立場に立って、コンサルティングみたいな形できちんとどうやって宣伝広告を売っていくのかという戦略的な会社に変わって行けば多分生き残るであろうと。

 そういうニーズは明らかにあるんだけど、ただそこも今過渡期であって広告業界が今きちんと答えきれていないっていうかんじになってきています。先進的な人たちはアドテク(広告テクノロジ)を駆使した新しい広告商品を投入するようになってきて、そこは光が見えています。ただクライアントの側がアドテクについて来れないとか、やっぱり過渡期的な問題もあいかわらず噴出してるのも事実。

「新聞ってどうやって生き残れるの?」

 ものすごい駆け足で、とりあえずメディアの業界の最近の様子をしゃべってみました。何か質問はありますか?

オガワ君:
 新聞社の将来性についてお伺いしたいんですが、今お話のあったようにニュース以外にもコンテンツを増やせばいいということなのかと思いました。佐々木さんの本『ブログ論壇の誕生』を読ませていただいて感じたのですが、年配の方や団塊の世代の方は情報を得るためには新聞が基本になっていて、ロスジェネとか我々の時代は携帯やネットから情報をとっている人が多くなっている上で、将来的に新聞発の情報のニーズがなくなっていくのではないかとも思います。生き残っていくためにはどうしたらよいのでしょうか?

佐々木:
 携帯やスマホで情報をとっているというけどその大元はネットメディアではなくて新聞社だったりするわけでしょ。そうすると、何ていうか媒体はなんでもいいんだよね。ものすごく簡単に言うと、物事をレイヤーモデル、層で考えると。読者がいて、ニュースや分析記事のコンテンツがあってその間に配信プラットホームがあって配信するところがある。

 例えば音楽でいうと、ある楽曲があって、iTunesっていう配信プラットホームがあってそれでリスナーがいる。それだけのシンプルな構造にたぶんなるんじゃないかなと思います。そうすると新聞社がコンテンツだけを握るのかそれとも配信プラットホームまで握るのかっていう綱引きになるわけ。結局一番お金が流れる所が一番強いので配信プラットホームの方が強いのね。

 例えば日経なんかは電子新聞やってますよね。自前で配信プラットホームを作ってそこそこの読者を集めているから、コンテンツとプラットホーム両方取れればそこそこ食っていけるかなと。あれは日経が発明したわけではなくてアメリカでウォールストリートジャーナルやフィナンシャルタイムズが有料モデルでやったのをマネしたんだよね。あとニューヨークタイムズが有料モデルでやっていると。

 ただね、相当専門知識がないと有料モデルでやっていけないよねと。そこでしか読めない記事を読むかどうかが大事なわけじゃない?
なので一般紙には難しいんではないかなと言われているんだよね。一般紙にはコアな記事ってあんまないでしょう。たとえば発表物とか速報以外で朝日新聞とか読売新聞に載ってる記事は何かというと、たとえば社会面の「家族の肖像」みたいな社会的連載。でもあれを金出してまで読みたいかっていうと、そうでもないかなみたいなこと。日経だったら日経なりの今のスマホ業界はこうなってるみたいな分析記事が載ってれば、それは実利がありそうだなとちょっと読みたいですよね。

 だからやっぱりビジネス系のいわゆる経済紙系は有料モデルに強いと言われてて、一般紙はなかなか厳しいんではないかなと。そこに専門性を持たせるのはすごい難しくて、そうは言っても僕なんか前から主張しているんだけど、記者ごとには専門性があるんだからそれを活用すればいい。

 たとえば読売新聞が最近医療向けのニュースサービスやってるけどけっこう成功しています。いろんな分野の記者がいるわけじゃないですか、経済や医療、教育、科学、原発とかもそうですし、すごい専門性のある優秀な記者っているんだけども、僕なんかも経験あるんだけど彼らは新聞に書くときに和らげるというか、わかりやすくするために丸くしちゃうんだよね。

 僕も昔新聞社でIT系の記事を書いていたことがあるんだけど、「OS」とか書いたら怒られるんだよね、わかんないとか言われて。「基本ソフト」って書かないといけない。業界的にはそっちの方がわからないんじゃないかと思うんだけど(笑)。

 あとCPUと書いたら何の事だかわからないとか言われて、それを説明するのにすごい苦労しました(笑)。だからアップルが新しいiPhoneを発表しましたみたいな記事があっても、朝日新聞に載っているの読むとなんだかよくわからないってことになる。ITメディア見て初めて意味がわかるみたいなことですね。

 要するに専門用語をなくそうとするあまり、意味が分からなくなっちゃう。おじいさんおばあさんにわかるようにしないとダメだとよく言われるけど、そんなんじゃなくてもっと専門記者が専門的知見をもっている読者あてに自分の知見を読ませるというのもあってもいいんじゃないかなと。

 そういう意味で言うと一般紙で言うと専門性のかたまりなんだから、教育分野の専門誌とか医療分野の専門誌とかそれぞれちゃんと作ってその分野の専門的読者に読ませる仕組みを作らせればいいんじゃないかなっていうことは言っていてそういう意味で言うと可能性はあるかもしれない。

ニシゾノ君:
 ということは、僕ジャーナリスト志望なんですが、ジャーナリストとしてやっていく場合に『電子書籍の衝撃』にもあったんですが、これからは専門性が求められていくということでしょうか?

佐々木:
 専門性がないと逆に食っていけない時代なんじゃないかなと思います。そもそもテレビのコメンテーターのような総花的な人は本当に必要なのかどうかだよね。

 今のテレビのショーに出てきているコメンテーター見てもつまらないじゃない(笑)。もう少し気のきいたこと言えよとか思うんだけど、あれって単に視聴者を代弁して物を言っているようなものであって、自分の知見で言っているわけではないわけだよね。

 芸能人の離婚があった場合「いや〜芸能人といえどもちゃんとして欲しいですね」なんてだれでも言えるじゃないですか。でもほんとに芸能界に詳しい博識のある人だったら、もっとまともなこと言えるわけで、そういうのは必要なのではないかと思います。

 どの分野でも専門性があるわけで、その専門性で飯を食っていかないと、ジャーナリズムは再生しないと思います。なのでみんなが言う評論家みたいな人はもう求められていないんじゃないかな。

ニシゾノ君:
 月並みな質問かもしれないんですけど、やっぱりある程度大学時代に院に行って専門性を高めてそういう世界に入るべきなのか、それとも新聞社などの大手に入って自分の専門性を高めていくのか、どっちの方がいいでしょうか?

佐々木:
 それは分野によって違いますね。日本の新聞社やテレビの場合、OJT(オンザジョブトレーニング)が中心になっていて、あんまり学生時代の知見って言うのは期待しない。これは他の業界も同じですが、まっさらな白紙の新卒を求めるみたいなところはある。

 そうは言っても、例えば今回の福島の原発事故で一番活躍した記者たちは誰かと言うと、大学で原子力を専攻していた人たちだったりするんだよね。だから理科系なんかは、圧倒的に学生あるいは大学院時代に作った知見っていうのは強いんだよね。OJTではそんなのは得られないんだよね。

 だから科学技術方面だとか、なんていうか仕事をやりながら覚えられないようなところは学生時代にちゃんとやっていく、もしくはそういう分野にいくならそこからスタートさせるっていうのは大事だね。

 でも一方で僕なんかもそうなんだけど文系で、早稲田の政経だったんだけど、学生時代ほんとうに何もしてないわけですよ、中退したしね。会社入ってずっと事件記者やってたんだけど、殺人事件なんかは当然学生時代の知見は何にも関係ないし、そんなもの習った奴はいないだろうというね(笑)。法医学とかそういう世界だと思うんだけど。だからやる分野によってぜんぜん違いますよ。

(中)に続く。

※これは昨年12月3日のメルマガ「未来地図レポート」222号に掲載した記事の要約です。メルマガのお申し込みはこちらからどうぞ。